眼精疲労の症状と目の疲れ対策を眼科医が解説 頭痛や吐き気・めまいの対処法にもなる


眼精疲労の症状と目の疲れ対策を眼科医が解説 頭痛や吐き気・めまいの対処法にもなる

目をよく使う仕事についている人などに多い眼精疲労。症状がひどくなると、頭痛や吐き気、めまいなども引き起こします。「眼精疲労が気になるけれど、どう対処したら良いかわからない」という方も多いのではないでしょうか。今回は、眼精疲労のケアについてご紹介します。

目の疲れによる眼精疲労とは?眼精疲労に多い症状、頭痛・吐き気・肩こりはなぜ起きる?

Q. 眼精疲労とはなんでしょうか?

A. 眼精疲労とは日頃から目を酷使する人によく見られる目の病気で、目が重い、かすむ、頭痛がする、吐き気がする、肩こりがするなどの症状を伴うことがあります。

Q. なぜ、眼精疲労になると頭痛や吐き気、肩こりが起きるのでしょうか?

A. そもそも、人間がものを見るときにはピントを合わせる必要がありますが、このとき、ピントを合わせるのは「毛様体筋」という筋肉の役割です。毛様体筋は水晶体のまわりにあり、扁平の形をしていて、近くを見るときは毛様体筋が収縮して水晶体が厚くなります。つまり、近くにあるものをずっと見続けると毛様体筋の収縮が続くことになり、毛様体筋は過度に緊張して、痙攣状態が続いてしまいます。

Q. それがなぜ、肩こりなどを引き起こすのでしょうか?

A. 毛様体筋の過度の緊張は、ストレスとして脳へ伝達されます。すると脳はストレス反応を起こし、首や肩などの筋肉を緊張させようとします。また、ストレスが原因となって自律神経のバランスが乱れ、交感神経が過度に優位になることで、肩こり、頭痛、動悸なども起きるのです。

Q. 眼精疲労は単に目の問題ではないのですね。

A. 気をつけていただきたいのが、安易に眼精疲労と自己判断しないでほしいというところです。眼精疲労の背景に、緑内障やドライアイなどの病気が隠れているかもしれません。そのため眼精疲労の症状が見られたら、眼科で診察してもらうことが必要です。

眼精疲労の原因と症状別の対策が知りたい 目の疲れを取る解消方法や目薬の有効性は?

Q. 眼精疲労の原因は、目の使い過ぎということでしょうか?

A. 多くの場合、スマホやパソコン、タブレットの画面を長時間見続けたり、デスクワークの時間が長かったりすることが原因で起こります。そのほかには、遠視や近視、乱視など視力に問題があったり、度の強いメガネやコンタクトレンズを使っていたりすることも、眼精疲労の原因になります。

Q. 眼精疲労は治るのでしょうか? 症状を取る方法はありますか?

A. 一番大切なのは、作業内容や生活環境に適したメガネやコンタクトレンズを使うことです。たとえば、近い距離でスマホやパソコンの作業をする人には、強い度数のメガネやコンタクトレンズは不要ですし、それらそのほか、眼精疲労のを使うことで眼精疲労がますますひどくなることもあります。

Q. なるほど。状況によって使い分けた方が良いのですね。

A. そうです。よくあるのは、常に過矯正のメガネやコンタクトレンズを使っているケースです。もっと視力をあげたいといって、強すぎるメガネやコンタクトレンズを常時使っていると、眼精疲労がひどくなります。その場合は少し度数を下げるだけで眼精疲労が解消されることもあります。

Q. 普段使用しているメガネやコンタクトレンズが自分に合っているか確認するには、どうしたら良いでしょうか?

A. 一度眼科を受診して、使用しているメガネやコンタクトレンズの度数が作業内容や生活環境に見合っているか確認してもらうことをお勧めします。また、年齢が上がるにつれて老眼が進んだり、視力の低下が進行したりするのもよくあることですから、普段からこまめにメガネやコンタクトレンズの度数が合っているかを確認してもらうと良いでしょう。

Q. そのほか、眼精疲労の症状を取るにはどうしたら良いでしょうか?

A. 長時間のパソコン作業やデスクワークが原因の場合には、なにより目を休めることが大事です。1時間に10分程度休憩を取るなどして、目を休める習慣をつけましょう。目を閉じたり、遠くをぼんやり見たり、蒸しタオルやホットアイマスクなどで目を温めたりすると良いでしょう。

Q. 眼精疲労のときに目薬を使うのは、効き目がありますか?

A. 眼科で目薬を処方された場合は、医師の指示に従ってご使用ください。一方、市販の目薬を使う際には注意が必要です。目薬を使うと、症状が緩和されたような気がすると思いますが、その効き目は一時的なものです。そもそも目薬は長期間、継続して使うものではありません。市販の目薬のなかには長期間使用すると、目の充血が取れなくなるものもあります。

Q. なるほど。長期間、市販の目薬を使うのは好ましくないのですね。

A. 大切なのは目薬に頼るのではなく、「目に合っているメガネやコンタクトレンズを使う」「目を休める」など、眼精疲労の原因を解消すること。症状が改善しなければ眼科を受診しましょう。

眼精疲労の原因がドライアイ、白内障など目の病気だった場合の治療はどうなる?眼科医が治し方を解説

Q. 眼精疲労とあわせて、ドライアイの症状が起きることがあります。これはなぜですか?

A. ドライアイが原因で、眼精疲労になることが多いのです。研究によると、疲れ目を訴える人の実に6割がドライアイといわれています。パソコンのモニターやスマホの画面を長時間見続けると、自然とまばたきの回数が減って、涙が減少します。涙には目の表面を守る働きもありますが、涙が減ると角膜の不正乱視をまねき、視力が悪化し、外界からの刺激にも敏感になります。そのため、眼精疲労が起きやすくなるのです。

Q. ドライアイを緩和するにはどうしたら良いのでしょうか?

A. 眼科では、まぶたの裏や粘膜を覆う成分ムチンと水分の分泌を促進する「ジクアホソルナトリウム点眼液」や、炎症を抑えながらムチンの産生を促進させる「レバミピド点眼液」、涙の量を保持する「ヒアルロン酸ナトリウム点眼液」を処方します。医師の指示に従い、それらを使用してみてください。

Q. ほかに、セルフケアするにはどうしたら良いでしょうか?

A. 部屋の湿度が低かったり、風が直接目に当たったりする環境だと、ドライアイの症状が出やすくなります。それから、コンタクトレンズが汚れていると、ドライアイの症状が悪化しますのでレンズケアに気をつけましょう。コンタクトレンズではなく、メガネを使うのも有効です。

Q. そのほか、眼精疲労の原因として気をつけた方が良いことはありますか?

A. 緑内障や白内障が原因となって、眼精疲労の症状を引き起こしていることもあります。放置すると、さらに症状が進むこともあります。この場合には眼科での治療が必要になりますから、早めに受診すると良いでしょう。


糸井 素純 医師(道玄坂糸井眼科医院)

昭和59年順天堂大学医学部卒業。京都府立医科大学大学院へ進み、昭和63年に医学博士、平成元年に眼科専門医を取得。京都府立与謝の海病院(現・京都府立医科大学附属北部医療センター)、大津市民病院、順天堂大学眼科学教室助手、ニューサウスウェールズ大学(豪州)、ロチェスター大学(米国)、東京警察病院眼科(副医長)と歴任し、平成10年糸井眼科医院を開院、平成16年に医療法人社団松六会 道玄坂糸井眼科医院を開設。順天堂大学眼科学教室の非常勤講師(円錐角膜に対するコンタクトレンズ処方を担当)、日本コンタクトレンズ学会常任理事兼任。


引用:「Medical DOC(メディカルドック) - 医療メディア」より

※記事内容は執筆時点のものです。
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