足のむくみやだるさ、見た目の異常が出たら受診を、「下肢静脈瘤」予備軍の可能性


足のむくみやだるさ、見た目の異常が出たら受診を、「下肢静脈瘤」予備軍の可能性

血管の浮きやこぶが膝から下にできる「下肢静脈瘤」。見た目の問題は、気にしない人なら全く意に介しません。しかし、患部の組織に思いがけない悪影響が出ているとしたら。自然治癒することはないという下肢静脈瘤の重篤化についてご紹介します。

下肢静脈瘤には2つのタイプがある

Q. 下肢静脈瘤って、悪化すると皮膚潰瘍を起こすことがあるんですよね?

A. 結論からすると、一概に「どんな病気へ進行していくか」という問いには答えられません。同じ下肢静脈瘤でも「網目のような模様が見られるだけで、むくみなどの症状を伴わないタイプ」と、「血管のデコボコと、むくみなどの症状を伴うタイプ」があるからです。前者の場合、網目模様の拡大はあっても、身体症状には現れてきません。一方の後者は、皮膚潰瘍などに進むこともあります。

Q. 身体症状の自覚がないタイプは、純粋に「見た目」だけの問題ということでしょうか?

A. そういうことですね。ですから、保険適用されるものの、治療の優先順位としては低いでしょう。一向に気にされない人もいらっしゃいます。ご本人が気にされないのなら、無理してまで治療を受ける必要はありません。ただし、両方のタイプを併発しているケースもあるので、受診だけはした方がいいかもしれません。

Q. 受診して「こぶになるタイプ」だと判明したら?

A. その場合は治療へ進むので、「放っておく」というケースに含まれなくなってきます。ですから、今回のご質問への回答は難しいですよね。受診したところで「治療の必要はない」と言われるケースもあれば、後になって「どうしてこうなるまで放置していたのか」と問われるケースもあるということです。

Q. 調べればわかるのに、今回の質問は受診していない前提だからでしょうか?

A. はい。なので、「かゆみなどの増加や皮膚潰瘍になることが考えられるけど、絶対ではないよ」という回答にならざるを得ないでしょう。だからといって、診断が付かないまま放置することは好ましくありません。専門クリニックなどでタイプの鑑別を経て、そのときの医師の指示に従ってください。

こぶが見られるケースは重篤化していく

Q. あくまで仮で構わないので、「こぶになるタイプ」の段階を教えてください。

A. あまり“段階”という言葉がなじまないかもしれません。「なんだか最近、足のむくみやだるさが気になる」といった感覚が先にくることもあります。静脈の滞留や逆流が起きているのに、いまだ、こぶに至っていないのでしょう。不快な症状だけでも治療の対象になりますから、お気軽にご相談ください。

Q. こぶは結果論であって、本題は血流であると?

A. そのとおりです。当院でも、足がツルツルなのに血流障害を伴っている人はいらっしゃいます。つまり、見た目から“段階”は問うことができないということです。そして、エコー検査をしてみれば、静脈の滞留や逆流は調べることができます。まず確認したいのは、血流の状態ですよね。静脈の滞留や逆流には弾性ストッキングが有効で、慌てて手術する必要はありません。ただし、なにもせず放置していると次に進みます。

Q. そこから先は想像がつきません。

A. 主に、皮膚の「色と質」の変化が生じてきます。「色」の変化の代表例は色素沈着で、やけどをした跡のような黒ずみが生じてくるでしょう。他方、「質」の変化としてみられるのは皮膚炎です。炎症により皮膚が硬くなってきます。どちらも、血流障害による酸素不足と栄養不足が原因です。

Q. そして、ファイナルステージが皮膚潰瘍だと?

A. はい。血液の滞留により、白血球すら届きにくくなってきます。ただし、歩けなくなることや足を切断するような事態には至りません。生活の質と見た目が「悪くなる一方」ということですね。ただし、静脈のうっ血による症状は、血流を改善すれば消えていきます。皮膚潰瘍の原因が下肢静脈瘤だとしたら、正しい診察を受けていただかないとはじまりません。

停滞・逆流がどこに起きているかを見極める

Q. 「こぶになるタイプ」の治療方法は確立されているのでしょうか?

A. はい。問題となっている静脈を完全に「通行止め」にします。血流を車に例えるなら、壊れている道路を車が進もうとするから渋滞・逆走してしまうのであって、ほかの健全な道に逃がしてあげれば、不都合も防げるでしょう。静脈を「通行止め」にする方法としては、静脈内にカテーテルを挿入し、そこから発する熱で静脈を閉塞させる方法やカテーテルから接着剤を注入して閉塞させる方法があります。なお、すべて日帰りかつ保険適応で可能な方法です。

Q. 健全なほかの道があるわけですか?

A. 「深部静脈」という血管の本流に問題が生じている場合、これを通行止めにしてはいけないことになっています。そのため、ふさいでもいいのは「伏在静脈」という血管の支流に限られます。ですから、エコー検査などで、どこに逆流が生じているのかを“必ず”見極める必要があります。

Q. 「深部静脈」の不具合だった場合は、どうしているのですか?

A. 基本的には、弾性ストッキングなどによる対症療法しかありません。なお、「深部静脈」の不具合の多くは、静脈内にできた血栓が原因です。カテーテルなどで血栓を取ることも考えられますが、手術自体がさらなる血栓リスクの引き金になることもあるのです。ですから、積極的に治療をしようとする医師は少ないでしょう。


平本 明徳 医師(さかえ血管外科・循環器クリニック)

名古屋市立大学医学部卒業。主に心臓血管外科の診療経験を積んだ後の2020年、愛知県名古屋市に「さかえ血管外科・循環器クリニック」開院。6000例以上の手術例を誇る下肢静脈瘤の日帰り治療に注力している。日本外科学会認定外科専門医、日本脈管学会認定脈管専門医・研修指導医、下肢静脈瘤血管内焼灼術指導医、日本静脈学会弾性ストッキング・圧迫療法コンダクター。


引用:「Medical DOC(メディカルドック) - 医療メディア」より

※記事内容は執筆時点のものです。
免責事項(Medical DOCサイトへ)

医師への24時間相談サービス 詳しくは「first call」へ

このコラムを読んだ方におすすめのアプリ

医師への24時間相談サービス

相談し放題になる、「dヘルスケア」有料利用についてはこちら

健康に関するちょっとした相談にも、医師が丁寧に回答。チャットで24時間気軽に医師に相談できます。